ファッション中級者への道 ② 生地の種類 【2019年版】
今回の記事では、前回のファッション中級者への道①で紹介した繊維の中から、当初の予定から大幅に減らした「これだけは最低限覚えておくべき!」という生地を実際に紹介していこうと思う。
前回の生地はこちら↓
初めに【重要】
まず今回多く紹介することになる「綿」「ウール」「リネン」の有名なものを挙げておくが興味なければ、種類は飛ばしてもいい。
綿 種類
- エジプト綿・・・別名GIZA綿とも言われ、流通を意図的に制限しているため、簡単には手に入らない高品質な高級綿。
- スーピマコットン・・・スーピマとは「Superior Pima」(上級ピマ)の略で、アメリカでピマ綿を品種改良してできた、高品質な高級綿。
- 新疆綿・・・中国の新疆ウイグル自治区でとれる高品質な高級綿だが、流通は特に制限していないため手に入りやすくはある。
- シーアイランドコットン・・・西インド諸島の恵まれた環境でとれる高品質な高級綿。イギリスの独占状態であったが、約40年前から日本でも取り扱えるようになった。
ウール 種類
- メリノ・・・オーストラリア・ニュージーランド・フランス産があり、高級ウールとして知られるが、ウール製品の半数がメリノ種という事実もあるので、単にメリノウールと言ってもピンキリ。(ニュージーランド産が最上級)
- チェビオット・・・それなりにウール製品にも使用されている筈だが、わざわざ名乗るほど高品質でもないので、メリノウールの記載がなければチェビオットウールの可能性も高い。
- コリデール・・・メリノ種とリンカーンの交配種で手編み毛系によく使用される他、ローゲージ(厚手)のニット製品にそれなりに用いられるが、わざわざコリデールウールとは記載しない事が多い。
- アイリッシュリネン・・・アイルランドで生産された最上級のリネンだが、現在では原料はアイルランドでなくてもOKなのが現状。本物の純粋種であるアイリッシュリネン100%は目が飛び出るほど高価。(現在でも十分高価)
- フレンチリネン・・・フランス北部で生産された高品質なリネンだが、最近ではどこもかしこも扱っているのでそれ程高価とは言えず、品質低下の可能性アリ。
- フランダースリネン・・・フランダース地方で生産された高品質のリネンだが、国内では流通も情報も少なく、取り扱っている場合も高価とは言えない。
次に、生地の紹介をする前に、まず基本的な生地の「糸の細さ」と「織り方」をさらっと紹介していく。
①細い糸(120番手)
②太い糸(80番手)
番手が上がるほど細い糸になり、大体ドレスシャツで(50番手~120番手)カジュアルシャツで(40番手~80番手)くらいまで存在し、番手の数字が大きくなるほど糸が細くなり金額も高くなることが多い。
色々と違いはあるが大きな違いは、使われる糸が細いほどフォーマルになり、太いほどカジュアルになるという事があげられる。
①平織り
②綾織り
③変則織り
織り方で覚えておくべきは、この3つだけ。
- 「平織り」・・・タテヨコの糸で交互に浮き沈みさせて織る
- 「綾織り」・・・タテ糸が2本もしく3本のヨコ糸の上を通過した後、1本のヨコ糸の下を通過することを繰り返して織られ、ナナメに見える。
- 「変則織り」それ以外の無数にある織り方で織られるもの(それぞれ名前があるが総称して、変則織りと名付けた)
とにかく覚えておくべきなのは、「平織り」は生地が薄いものが多く目が詰まっていない生地が多い。「綾織り」は生地が厚くなる事が多く目が詰まっているの物が多い。
要するに、
「平織り=春夏用 綾織り=秋冬用」
と覚えておけばほぼ間違いない!
(左 平織の組織構造 右 綾織りの組織構造)
↑は青い糸と白い糸で縫っていて、見えない部分は潜っている糸。
最後に、今回は柄の種類(ストライプ・チェック)を紹介したい訳ではないので、織り方によって柄のついているもの以外は、すべて無地で統一し紹介する。
(参考画像)
要するに、参考画像の写真はどれも「綿ポプリン(ブロード)」と呼ばれる生地になるが、「なるほど。ブロードは柄入りの生地なのか」と混同しないためにも一番左の無地で紹介するという事。
では生地紹介。
1.ブロード(ポプリン)綿【オールシーズン】・リネン【春夏】
(左綿 右リネン)
綿「ドレスシャツ」に多く用いられる最もオーソドックスな平織りの生地で、中でも細番手の糸を使ったシャツは、かなりフォーマルなシャツに分類され、季節も【オールシーズン】使えるものになる。
麻「カジュアルシャツ」に最も多く使用されるカジュアルな生地だが、クールビズスタイルでは「ドレスシャツ」として用いられる事もしばしば。季節はその生地の特性から【春夏限定】で、秋冬に着るものでは断じてない。
※ネット上では、リネンシャツとして表記される事が多く、リネンブロード(ポプリン)シャツと表記される事は少ないが、実際は列記としたリネン[素材]ブロード[生地の種類]のシャツが多い。(ブロード=ポプリンの定義が曖昧なため起こる現象)
2.オックスフォード【オールシーズン】綿
「カジュアルシャツ」に多く用いられる平織りの生地であり、同じくカジュアルな襟型の象徴である「ボタンダウン」のデザインの物が多いが、「ドレスシャツ」として使われる事が多いのも現状。
しかし、ドレスシャツとして用いるにはカジュアルな生地になるのでジャケパンスタイルなどに合わせる事が普通で、スーツに合わせるのはあまり好ましくない。
オールシーズン使える生地ではあるが、生地自体がそれなりに厚い生地なので、個人的には猛暑での着用をオススメしない。(平織りで風通しもよく、汗をよく吸うという理由から夏にオススメとされる事が多いが…)
3.シアサッカー【春夏】綿
「ジャケット」に多く用いられるが、最近では「シャツ」に用いられる事もしばしばで、しじら織りとも呼ばれ、生地の表面がぼこぼこ波打っているのが特徴的。
生地の特性から【春夏限定】の生地で、ドレスシーンに用いるというよりはカジュアルシーンに本来用いるべきだが、日本の真夏の猛暑でジャケットの着用をする際は必須アイテムともいえる。(カジュアルな生地であることは間違いないが、汗だくで通常のジャケットを着用するよりはよっぽどいいだろう。)
4.シャンブレー【オ―スシーズン】綿
「カジュアルシャツ」に多く用いられる平織りの生地であり、デニム風でカジュアルな生地であるが、細番手の糸を用い「ドレスシャツ」として着用される事もしばしば。
しかし、ドレスシャツとして用いるには大変カジュアルな生地で「オックスフォード」よりもさらにカジュアルなので、全く持ってオススメできない!
何故シャンブレーをドレスシーンで着用する人がいるのかは分からないが、もし周りと差別化したいという願望からくるものなら、今回は紹介を省くがオススメの生地はいくらでもある。
5.ダンガリー【オールシーズン】綿
「カジュアルシャツ」に用いられる綾織りの生地でいわゆるデニムシャツ。
見た目こそシャンブレーシャツに似ているが、シャンブレーとの違いについては、
などがあげられる。
6.デニム【オールシーズン】綿
「カジュアルパンツ」に用いられる綾織りのインディゴ染めされた綿織物。
案外デニムはデニムという繊維から出来ている物だと思っている人が多いが、列記とした綿素材の織物で基本的に生地は厚め。
この記事であまり深く語るつもりはないが、基本的にオールシーズン着用できると思って間違いないが、生地のオンス(重さ)で春夏に特化したデニムもあれば、秋冬に特化したデニムもあるので注意が必要。(13~14オンスあたりが通常)
※最近のデニムはポリウレタン混紡(約1~5%)のストレッチデニムが異常に多い。
7.チノクロス【オールシーズン】綿
「カジュアルパンツ」に多く用いられる綾織りの生地で、この「チノクロス」と呼ばれる生地を用いたパンツがチノパンツ。
しかし、現在では「綿パン」と呼ばれるものは平織りであろうと、チノクロスを用いて言あなかろうと全てチノパンツと呼ばれる事が多い。
これが原因で非常に幅広いタイプのチノパンツがあると誤認されがちだが、チノパンツは本来、綾織り厚手の生地の綿織物なので個人的には真夏の着用はオススメしない。
8.ギャバジン【オールシーズン】綿・ウール
「カジュアルパンツ」に多く用いられる他、撥水加工などを施して「トレンチコート」「ステンカラーコート」にも用いられる綾織りの生地。
チノクロスと非常に似た見た目であるが違いとしては、ギャバジンの方が細糸で密に織られたものが多く「ツヤ」「風合い」が優れたものが多い。(実はチノクロスより更に似たサージという生地もある)
また、ギャバジンにはウールで織られた生地も多い他、綿パンなら何でもチノパンツと呼ばれるのと同様「ツイルパンツ」として市場に出回っているものも多い。
9.キャンバス【オールシーズン】綿・麻
「カジュアルバッグ」「スニーカー」に多く用いられる他「Tシャツ」「カジュアルパンツ」にも用いられる平織りの生地。
衣料用として用いられるのは綿100%が殆どで、麻でできたキャンバスと言えば「真っ白いキャンバスに夢を描こう!」とかいうアッチの美術系の方。
かなり粗く織られた丈夫な生地が多いので、実際洋服に使われる事はあまりないが、綿素材の代表的な生地であることは間違いないし、スニーカーやバッグとしては一つのジャンルとして確立している生地なので紹介した。
10.トロピカル【春夏】ウール・ポリエステル
「ジャケット」「スーツ」「ドレススーツ」に用いられる平織りの生地。
ウールは秋冬の素材という概念を変えるのがこのトロピカルで、最近ではコットンスーツなどが出現しだし登場機会が減りつつあるが、夏用のスーツ生地として最も多く使われているのがこのウールトロピカルだろう。
勿論他にも夏用のスーツとして使われる生地は色々とあるが、「これだけは覚えておいて欲しい!」というのが正にウールトロピカルで、生地の特性として通気性・吸湿・放湿に優れるため、とにかく涼しい。
夏用のスーツが欲しいけどシアサッカーやコットンスーツはカジュアルすぎるという人には、ウールトロピカルが特におすすめの生地だ!
※実際にはポリエステル100%のトロピカルが多い
11.フランネル【秋冬】綿・ウール
(左綿 右ウール)
「ジャケット」「カジュアルシャツ」に用いられる平織りや綾織りの織物で、ウールや綿で作られる。
平織りでも綾織りでもウールでも綿でも、更には国ごとで特徴が異なるなど、定義が曖昧になりつつあるフランネルだが、程度の差はあれど共通点として、柔らかい・軽い・毛羽立てられた・秋冬用というものがある。
因みにシャツとして用いられる場合、我々にとっても馴染み深いあのチェック製品が多い「ネルシャツ」になる。
また、似た生地に「サキソニー」「メルトン」が挙げられるが、簡単な違いとして
というものがある。
12.コーデュロイ【秋冬】綿
「カジュアルパンツ」に多く用いられ、「ジャケット」「カジュアルシャツ」にも用いられる縦横ビロード織りした綿製のパイル織物。
日本ではコール天の別名もあり、コーデュロイの「ジャケット」も多かったが、現在では「カジュアルパンツ」として使用される事が専ら。
特徴としては、縦畝・光沢感・毛羽だてられたなどがあげられ、間違っても春夏に着用するようなアイテムではない事は最低限覚えていて欲しい。(夏に履いている人を実際に見たことがある)
13.ベルベット【秋冬】綿
「ジャケット」「カジュアルパンツ」に用いられる平織りか綾織りの経糸にパイルを織り出した綿製のパイル織物。
別珍・ベロア・ベルティーンなどの呼称は様々で、厳密に言えばどれも別の物になるが、殆ど同じものであるという解釈でOK。
また、コーデュロイと同じカテゴリーに入れられる事も多いが、コーデュロイとの違いとしては、
- コーデュロイがタテ糸をパイル状にした織物に対してベルベットはヨコ糸をパイル状にした織物
- 見た目状の大きな違い
- メンズ製品としての流通量の違い(コーデュロイパンツは近くの服屋でもどこでも手に入れられるが、ベルベットのメンズ製品は探さないと見つからない)
などがあげられる。
14.メルトン【秋冬】ウール
「ダッフルコート」「Pコート」に主に用いられる平織りか綾織りの織物。
あまり細かい専門用語を使うと、かえって分かりづらくなるので専門的な説明は省くが御覧の様な見た目で、誰しもが一度は目にしたことがあると思う。
「ダッフルコート」「Pコート」の他にも様々な冬用コートに用いられ、メルトン生地を使用している事から、単に「メルトンコート」と言われる事も多い。(ジーンズの事を最近では「デニム」というのと同じ感覚)
15.ツイード【秋冬】ウール
「ジャケット」「コート」に主に用いられる平織りか綾織りの織物。
ツイードに関しては、少しでも語りだそうものなら簡単に+5000字は増えるだろうからこの記事で詳しく書かないが、重要な事だけ言うと、
- 最も有名なツイードはハリスツイード
- 夏用のサマーツイードも存在する
- ツイードは「デニム」や「レザー」のようにエイジングを楽しむもので、新品を喜んで着用するものでもない
- 発祥の地イギリスにちなんだ柄の物が多い
- メルトン・フランネル・サキソニーと違い起毛はさせない
という事だ。
やはり必要だと思った生地は随時更新。
ではこの辺で