コーディネートの基本

最高級の既製服【イタリア】VS【イギリス】 

今回の記事では、クラシックなスーツスタイルを突き詰めていくとたどり着く「イタリア」と「イギリス」それぞれの最高品質の既製服ブランドを紹介していく。

 

 

初めに

まず初めに言っておきたいのがこの記事は、いつも書いているファッション初心者向けとはおよそ言えないものなので、

初心者にとっては専門用語や意味わからん事ばっかり書いてあって読みにくいかもしれないけど、「へーこんな世界もあるんだ」くらいに思っておいてくれたら幸いです。

 

 

 

実は今回の記事を書こうとしたきっかけは、「サヴィルロウ*1といえば、ビスポークスーツ*2のイメージしかなったにも関わらず、既製服を取り扱っているとごく最近知ったからだったからだ。


サヴィルロウが経営難に追い込まれているというのは前々から言われていた事で、チャイニーズマネーが流れ込んできて、買収されたテーラー*3もあるらしい。

「へ~時代かな~」くらいにしか思わなかった。

実際サヴィルロウ仕立てのビスポークスーツへの憧れはあるが、おいそれとロンドンまで行けるわけでもなく、一着約50万~のスーツなんて手が出ないし、吉田茂の懐刀でダンディズムの父「白洲次郎*4」でさえ、ヘンリープール*5に注文を入れたのは60を過ぎてからなんだから、注文服なんてまだまだ先の話。

だから「何だかんだ注文服でやっていくんだろうな~」くらいにしか考えてなかった。

 

しかし、長谷川喜美氏のある記事によるとサヴィルロウに店を構える店々が、次々に「既製服」の販売に乗り出したそうじゃないか!


これまで様々な所で、ファッション通の間で取り上げられたイタリアの「アットリーニ」「キトン」「ブリオーニ」などの高級既製品とイギリスの「サヴィルロウ」のビスポークはどちらがより優れているか問題。

この問題に、サヴィルロウ制「既製服」が加わるとなるとこれはファッション業界で大きな問題だ!

 

にも関わらずチラッと検索をかけたが、ぜーんぜん出てこない。

「あれ?どーなってんだ?」とは思わなかった。

それもそのはず、「アットリーニ」「ブリオーニ」「キトン」でさえ大衆向けではなく一部の限られたミリオネアーやエグゼクティブ向けであるからあまり検索にひっからないのに、とにかく日本のファッション業界は「タリタリタリタリタリタリ

大手セレクトショップや大手の雑誌各社が、イタリアものの「ラルディーニ」「タリアトーレ」「PT01」その他諸々の20~30のブランドの宣伝や販売はしてくれるが、イギリスものの販売なんて「ポールスミス」「バーバリー」「マッキントッシュ」「ヴィヴィアンウエストウッド」「ダンヒル」とかその辺くらいだからだろう。

 

何てったって、メンズファッションの祭典「ピッティウォモ*6の日本人来場者数は他の諸々の欧州諸国を差し置いて2位ってくらいイタリアが大好き。

とにかく日本人にはイタリアと聞くだけで、「お洒落」とか「カッコいい」とかそういうイメージを持ちやすい。

挙句の果てには、ポロシャツやTシャツに「イタリア国旗」が印刷されたよくわからないデザインのものでさえ割と身近に販売されるくらい。

(かくいう私もイタリアものを愛用しているうちの一人で、イタリア物は好みだが・・・)

それはさておき、洋服の歴史ってイギリスによる功績が大きいんだから、もうちょっとイギリスものの特集なりなんなり組んでくれてもいいんじゃない?と思った。

 

要するに、日本はイタリアものの販売ルートやパイプには強そうだけど、ことイギリスの「サヴィルロウ」ともなればパイプ何てまだまだで特集さえ組めないんだろうから、情報が出回ってないんだろう。

(既製服販売に乗り出したのが最近らしいし、やっぱり金額も高いうえにサヴィルロウは日本の舞妓さんみたいに一見さんお断りみたいな閉鎖的な雰囲気があるから・・・)

 

という事でこれは記事にしてみると面白いんじゃないかと思い書くに至った。

 

だから本当はサヴィルロウ生まれの既製服についてだけ書こうと思っていたがやはりよく比較対象に挙げられるような「アットリーニ」「キトン」「ブリオーニ」だけはせめて書かなければと思い書くことにした。

高級既製品ってタイトルだけで見ると「ジョルジオアルマーニ」や「グッチ」等も入れるべきだけど、今回はサルト系の派生ブランドについて書くので、

の両ブランドは少し角度が違うし「メゾンマルジェラ」「ブルネクチネリ」「イザイア」なんかもちょっと違う。

「サルトリア・ダルクォーレ」なんかが一番今回の趣旨に近いイメージだが、それらも「アットリーニ」「キトン」「ブリオーニ」とに比べると1段値段が下がるので省く事にした。

 

とは言え、イタリア3ブランドはともかく、実は「サヴィルロウ」のお店で知っていたのは、「ヘンリープール」と「ギーブス&ホークス」くらいで、そのほかのお店は今回初めて知ったお店(ブランド)なので所々間違っている情報があるかもしれないのでご容赦ください。

 

 

イタリア

初心者の方にもわかりやすいように軽ーくだけ説明すると、イタリア仕立て(主にナポリ)のスタイルといえば、軽やかで羽織るような着心地のジャケットで、鮮やかな色合いで滑らかな曲線のものが多く、柔和で柔らかい雰囲気の中に品を感じるようなものが多い。

一言でにいうなら「エレガント」

 

1.Cesare Attolini(チェザーレ・アットリーニ)

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1930年ナポリにてヴィンツェンツォ・アットリーニが創業。

ヴィンツェンツォアットリーニはロンドンのテーラー「ロンドンハウス」で修業を積み名カッターとして名を轟かせた人物。

創業後は「マエストロ」ヴィンツェンツォの優雅で軽やかなジャケットを求め、ナポリ市民が巡礼のように押し寄せ、50年代以降は「風と共にさりぬ」のクラーク・ケーブルを広告塔に据え、さらなる飛躍を遂げる。

クラシコ好きならご存知の「バルカポケット」「キッスボタン」「マニカカミーチャ」など様々なスタイルを生み出したのもヴィンツェンツォアットリーニで、現在のナポリスタイルの開祖とも言われている。

イギリス仕立てしか愛用しなかったあの有名なウィンザー公でさえ、ヴィンツェンツォの魔法に魅了された内の1人。

チェザーレ・アットリーニはヴィンツェンツォ氏のご子息で現在のオーナー。

父親から確かな技術と才覚を引き継ぎながらも、ビジネスの才能も持ち合わせたチェザーレは、イザイアやキートンの立ち上げに参画後、自身の既製服のブランドを立ち上げた。

(厳密には、ヴィンツェンツォ・アットリーニの工房はチェザーレの兄であるクラウディオが継いだが、クラウディオの息子が継がなかったためとっくに廃業しているが、血族という事で1930年創業になっている。)

因みに、チェザーレ・アットリーニのセカンドラインとも言われる「スティレ・ラティーノ」のオーナーも同名のヴィンツェンツォ・アットリーニで少し紛らわしいのだが、彼はチェザーレの子息の一人で、伝説のマエストロのヴィンツェンツォの孫。

 

チェザーレアットリーニは、日本での店舗や正規代理店はおろか日本ではホームページすら存在しないので、購入するなら英語版かイタリア語のサイトで。(百貨店やセレクトショップが一時的に扱う事はある)

 

最大の魅力は何といってもアットリーニ家の血を継ぐ、チェザーレ・アットリーニ氏が手掛ける、美しくエレガントなジャケットで50万円程度~だが、これはもう色々語るより「百聞は一見にしかず」。めちゃくちゃカッコいいので是非ホームページのコレクションを見るだけでも。

強いていうならこの後に紹介する「キトン」「ブリオーニ」と比較し最もクラシックでイタリアクラシコのスタイルに近い。

しかし、残念なことに紹介する公式サイトではジャケットは買えないので、ニューヨークかマイアミにGo!!

 

※ジャケットを手に入れる方法をご存知の方はご教授ください

 

Cesare Attolini 公式ホームページ 

http://cesareattolini.com/

 

創業者 ヴィンツェンツォ・アットリーニ氏 

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ジャケット集

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 コレクションから一部抜粋

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2.Kiton(キートン

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チロ・パオーネが1969年にナポリにて創業。

スーツ・ジャケットはもちろん、コート・パンツ・シャツ・タイ・シューズ・ニットまで手掛けるラグジュアリーなトータルファッションブランド

モデリストにチェザーレ・アットリーニ、製造にエンリコ・イザイア、さらにはルチアーノ・バルベラまでもが創生期のキートンに参集し、純度の高い歴史的な幕開けから始まり、世界で最も美しい服を掲げ、この上ない生地と優れた職人を礎に、チロパローネの理想とするエレガントスタイルを求め続けている。

芯地と服地の相性、アイロンによる馴らし、袖や肩、ボタンホールのかがりなど、着心地や着易さの為には一切の妥協はなく、キートンの服特有の柔らかさとドレープの美しさは職人たちの熟練の手によって作り出されている。

まさに「羽織る」という表現がふさわしい軽い着心地や、シーズン性の高い「カシミア」「シルク」「リネン」などをふんだんに使い、一貫して流れる柔らかな曲線をもったエレガントなシルエット

圧倒的なクオリティで、ナポリ仕立てを頑なに守りつつ現代的でフレッシュな感覚を併せ持ったコレクションこそ、キートン最大の魅力。

 

嬉しい事に、日本での展開があり東京に直営店が5店舗と大阪に1店舗あり、セレクトショップのストラスブルゴが「東京」「大阪」の他に「名古屋」「神戸」「福岡」で取り扱っているので実物を見て購入する際はそちらで。

嬉しくない事に、ジャケットやスーツで65万~150万程度もするので、最高品質を求めているがオーダージャケットを作る時間のないミリオネアーにおすすめ。

シルエットとしては「ブリオーニ」と「アットリーニ」の中間といった感じ(どちらかといえばブリオーニに近い)

 

Kiton 公式ホームページ(日本版)

http://kiton.co.jp/

 

創業者 チロ・パオーネ氏

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 ジャケット集

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 海外サイトのコレクションから一部抜粋

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3.Brioni(ブリオーニ)

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 ナザレノ・フォンテコリ、ガエターノ・サビー二らが1945年にてローマで創業。

最高のハンドテーラリングと最高の生地にこだわった、軽やかでしなやかなスーツは従来のイギリス式の概念を壊し、革新をもたらした。

1952年には世界初のメンズコレクションをフィレンツェで開催し、そこでさらに人気を獲得していき、ブリオーニのスタイルを確立した。

アットリーニの広告塔だったクラーク・ケーブルもまた、ブリオーニのスーツを愛した1人。

他にもブリオーニといえば、いわゆる「ボンドスーツ」として有名で、5代目ジェームスボンドのピアース・ブロスナンが「ゴールデンアイ」で着用し、6代目ジェームスボンドのダニエル・クレイグが「カジノロワイヤル」で着用した事で知られている。

これはすさまじい快挙でジェームスボンドは生粋の英国紳士で、これまでの作中ではサヴィルロウ仕立てにしか袖を通さなかったにも関わらず、イタリア生まれのスーツを着用したという事は、スーツの歴史が最も深いイギリスがイタリアのスーツを認めたという事だ!

 

因みに、「ブリオーニ」名の由来は、オーストリアハンガリー帝國時代、世界のセレブリティが集まるアドリア海に浮かぶ14の島々、ブリオーニ島だそうだ。

クラシコイタリア加盟店19社中、最も高評価を受けている会社の一つだが、アットリーニやキートンに比べて少しモードよりのがブリオーニという印象。

 

日本での取り扱いは、現在では名古屋の松坂屋と大阪の阪急が取り扱っているぐらいで殆どないので、日本語版のネットショップで買おう。価格はジャケットで40万~100万くらい。(一時の取り扱いや過去に取り扱っていたという店が多い。)

 

Brioni 公式ホームページ(日本版)

https://www.brioni.com/it

 

 ブリオーニ愛用のスター達

トム・クルーズ」「ブラッド・ピット」「ウィル・スミス」「ヒュージャックマン」「サミュエル・L・ジャクソン」「アーノルド・シュワルツェネッガー」「ウサイン・ボルト」「マイケル・フェルプス」など

 

5代目ジェームスボンド(現在)

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 ブリオーニコレクションより一部抜粋

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 イギリス

 これも簡単にだけ説明しておくと、イギリス仕立ては厚めのしっかりとした暗い色の生地を使い、芯地やパッドもしっかり入れた構築的なジャケットがおおい。

サヴィルロウで仕立てられたジャケットは、まさに一部の隙も無い完璧な仕上がりで、1本筋の通った質実剛健の硬派なジャケットで、イギリススーツに袖を通すだけで箔がつくとも言われている。

一言でいうなら「たくましさ」

 

1.RICCHARDHARD JAMES(リチャード・ジェイムス)

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リチャード・ジェームスとショーン・ディクソンの両名が1992年ロンドンのサヴィルロウ19番街にて創業。

会社の創設者であるリチャード・ジェームスとショーン・ディクソンは、創業以前からファッション業界中からの注目を浴びており、リチャード・ジェームス独自のスタイルとしては、シャープでスリムに見せるカット、大胆な色使い、熟練した職人技を持つ製造パートナー、そしてすべて最高級の素材を使うという点にある。

若干15年の歴史でありながら、100年以上続く老舗テーラーの「クラシックでいつの時代も愛されるベーシックなデザイン、細やかなディテールと質にこだわった品質を提供する。」という概念を取り入れ、歴史あるブリティッシュテーラー業界、および現代メンズファッション業界で「ニュー・ビスポーク・ムーブメント」と評され新しい水準を確立した。

 

まるで、イタリアよりイタリアらしい色使いでホームページを見ても、淡い桜色のスーツに身を包んだモデルが目に飛び込み度肝を抜かれた。

どちらかといえば歴史ある老舗テーラーが展開し始めた「既製品」こそ今回紹介したかったものなのだが、サヴィルロウの様々なテーラーが「既製品」を展開することになった先駆けとなった革新的なブランドのため紹介した。

要するに伝統(サヴィルロウの技術を継承しつつ)革新(ダークグレーやダークネイビーしか取り扱わないサヴィルロウの風土を一新した)のブランドという事だ。

 

日本での取り扱いは「伊勢丹新宿店」「銀座三越」「JR京都伊勢丹」「阪急メンズ大阪」の4店舗で価格はジャケットが10万円前後と手の届かない範囲ではないので、「ラルディーニ」「タリアトーレ」等のイタリアジャケットに飽きてきたという方は、是非ニュー・ビスポーク・ムーブメントと評されるサヴィルロウの革命児リチャード・ジェームスを。

 

※因みにミラノの「リチャード・ジェイムス・ブラウン」とは異なるので、注意。

 

RICCHARDHARD JAMES 公式サイト

https://www.richard-james.com/jp

 

創業者の両名 左リチャードジェームス氏 右ショーン・ディクソン氏

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 雑誌vogueより一部抜粋

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2.RICHARD ANDERSON(リチャードアンダーソン)

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リチャード・アンダーソンとブライアン・リシャクの両名が2001年サヴィルロウ13番地にて創業。

リチャード・アンダーソンはこの後紹介するハンツマンとの関りが深く、17歳で偉大なるテーラー「コリン・ハミック」「ブライアンホール」の下でそのキャリアをスタートさせる。

コリンの伝統的な技術を継承し、若干34歳という若さでハンツマンのヘッドカッター*7に就任し、「100年を超えるサヴィルロウの伝統とブリティッシュなスタイルをイギリスに復権させる事」を目標に、50年計画を邁進中。

 

得意とするスタイルは、まさに伝統的なブリティッシュスタイルを思わせるような、パッドを使った美しいショルダーライン、しっかりとしたウエストのシェイプ、高いアームホール位置、それに加えハンツマンで学んだ「シングルボタンジャケット」のエッセンスが盛り込まれたものだ。

 

今回紹介したリチャードアンダーソンも創業20年も迎えておらず、サヴィルロウの伝統的なテーラーと比較すると、比較的に歴史が浅い。

にも関わらず、リチャードアンダーソンを紹介したのは、サヴィルロウに「既製服」という概念を持ち込んだパイオニアの1ブランドとして革新を重視する「リチャードジェームス」や「オズワルドボーデン」とは対照的な位置づけとして、伝統を重視するブランドとして紹介した。

 

日本での取り扱いは、ほとんどなく百貨店などが一時的に取り扱う事くらいなので公式サイトからの購入になるだろう。価格はジャケットやコートで10万程度~20万程度。「本当に既製品なのか」と目を疑うクオリティの高いジャケットやコートだったので、質の高いブリティシュスタイルを目指すジェントルマンにおすすめ。

 

RICHARD ANDERSON 公式サイト(英語版)

https://www.richardandersonltd.com/

 

創業者 リチャードアンダーソン

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 ジェントルマンスタイルより 一部抜粋

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3.Gieves&Howks (ギーブス&ホークス

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 ジェームズ・ギーヴとトーマス・ホークスが各々で経営していた会社が原型で、1974年に合併し、現在のギーブス&ホークスという会社の名前になり、サヴィルロウ1番街に店を構える。

ホークスは1771年「Hawkes&Co」の原型の会社を創業し、ギーブが「Gieves&Co」の原型の会社であるGalt&Gieveを創業したのが1853年。

つまり創業は1771年という事になり、200年以上の歴史を持つ老舗テーラーだ。

「Hawkes&Co」は英国陸軍に制服を供給し名を轟かせ「Gieves&Co」は海軍のテーラーとして有名になり、両社が合併したことにより、英国の海軍・空軍・陸軍のユニフォームにアクセサリーの製作に加え、パブリックスクールの制服の製作で、英国上流社会に溶け込み、英国人に最も愛されるブランドとなる。

現在は香港コングロマリットTrinity Ltd.が所有する会社となっているが、3つ全ての「ロイヤルワラント*8今でも顕在。

 

かなり端折らせてもらったが、とにかく200年以上続く歴史の中で、取り扱った顧客は現代や過去の有名俳優だけではなく、歴史上の人物も多数存在する。

ファッション界においては、「ケイスリーヘイフォード」がクリエイティブディレクターになった事や、元ブリオーニの「ジェイソン・バスマジアン」がクリエイティブディレクターになった事で話題を呼び、

他にも「キャサリン・サージェント」が、サヴィルロウで最初の女性ヘッドカッターとなった事や、「久保田博氏」が日本人初のサヴィルロウでのヘッドカッターに認定された事でも話題を集め・・・とにかく話題に事欠かない。

ギーブス&ホークスは日本にも2度参入しているそうだが、根強いイタリア人気からか二度とも撤退に追い込まれている。

 

日本での取り扱いについてだが、百貨店などによる一時的なものが殆どで、ネット上のセレクトショップか英語版の公式ホームページのみになる。価格はジャケットやスーツで20万前後だがセールも行っているみたいだ。

まさに英国を象徴するようなシルエットで、これならサヴィルロウ生まれの既製品として一つのジャンルを気づけないだろうかと思わせる出来だった。

既製品としてのギーブスを他のモードブランドと簡単に比較する事は難しいが、ある人物曰く、アルマーニフェラーリなら、ギーブスはベントレーだそうだ。

 

因みに、今回は既製服の紹介だから紹介は省くが、ギーブス&ホークスのビスポークスーツを日本でも味わいたいならこの後紹介する両名どちらかのお店で。(世界に誇るカッター)

 

Gieves&Howks  公式サイト(英語版のみ)

https://asia.gievesandhawkes.com

 

カッターを務めた両名 久保田博氏 有田一成氏

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 Gieves&Howks コレクションより

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4.ANDERSON&SHEPPARDE(アンダーソン&シェパード)

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パー・アンダーソンとシドニー・シェパードの両名により、1906年にサヴィルロウ30番地にて創業。

1930年代に活躍したオランダ人の名カッターフレデリックショルティが開発した「ドレープ技法」は、肩からウェストへかけて、胸部が空気をまとっているかのような柔らかさで「イングリッシュドレープ」とも呼ばれメンズウェアにおける偉大な革命のひとつとされている。

彼の弟子であったパー・アンダーソンがフレデリックショルティから継承した流麗な仕立てのドレープスーツの技術は他とは異なるスタイルで、「ロンドンカット」とも呼ばれ、あのウィンザー公をも魅了した。

袖の上部に位置する高く小さなアームホールが、首の近くにゆとりを与え、これにより、腕の動きが快適となる。

この特性に加え、ナチュラルなボディラインがより動きを自由にし、非常に着心地の良さとエレガントな雰囲気を生み出し、従来のイギリススーツスタイルと一線を画した。

顧客には「フレッド・アステア」「ゲイリー・クーパー」「セシル・ビートン」「ローレンス・オリヴィエ」「ノエル・カワード」「レイフ・ファインズ」「チャールズ皇太子」などの著名人が名を連ねる。

 

あの前衛的で革新的なデザイナーアレキサンダー・マックイーンが修行時代をを過ごしたのが、このアンダーソン&シェパードというのは有名な話で、現在は顧客でもあるチャールズ皇太子「ロイヤルワラントを取得している。

 

日本での取り扱いだが、殆どどころか全く見当たらない。つまり購入はネットショップでという事になるのだが、さらに残念なことにテーラードジャケットやコートは売っていないため、アンダーソン&シェパードの魅力であるエレガントなジャケットを既製品で味わう事はできない。

それ以外のカジュアルアウターやセーターやトラウザース*9か小物になる。

価格はアウターで10万前後、セーターで3万前後トラウザースが4万前後。

ジャケットが売ってないのは非常に残念だが、アンダーソン&シェパードはジャケットとトラウザースのカッターが別なので、トラウザース専門の質の高いカッターのトラウザースを狙うのがオススメ。(アンダーソン&シェパードもネットショップはかなり色鮮やか)

 

ANDERSON&SHEPPARDE 公式サイト(英語のみ)

https://www.anderson-sheppard.co.uk/haberdashery/

 

ニット集

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小物集

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5.HUNTSMAN (ハンツマン)

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ヘンリー・ハンツマンによって1849年にロンドンで創立された。

ハンツマンは「狩人」の名のごとく、19世紀の大部分にわたってヨーロッパの貴族の狩猟衣装を着飾ったことですぐに評判を得た。

実際にハンツマンブリーチを着用し、馬上に乗っている黄金時代のハリウッドスターの写真が描かれたものが残っており「クラーク・ケーブル」や「デイビッド・ニーブン」も描かれた内の一人で、馬術服を着た「エドワード7世」の写真を描いたもの残されている 。

ハンツマンと王室の関係は開業以来ビクトリア女王アルバート王子にまで及んでおり「エドワード7世」や「ビクトリア女王」両名からレザーブリーチメーカーとして、2つの「ロイヤルワラントを獲得している。

第一次世界大戦中は、軍隊のテーラーでもあり1919年に終戦を迎えるにあたってサヴィルロウサヴィルロウ11番街に移転した。

1932年にヘンリー・ハンツマンの息子の手からロバート・パッカーに渡り、ハンツマンの評判を単なる信頼性の高いブリティッシュメーカの評判から、華やかなオーダーメイドのファッションハウスへと変貌させた。

ハンツマンはその長い歴史の中で、様々な王族や銀幕のスターなど様々な著名人を顧客に抱えてきたが、最も有名なのが「グレゴリー・ペック」との関係で、ペックは生涯に160以上ものスーツをオーダーしたと言われている。

近年では、コリンファース主演の映画「キングズマン」の撮影場所や衣装提供をしたことで、再び注目を浴びている。

 

ハンツマンのハウススタイルは、乗馬用のライディングジャケットの歴史を継承しているため、構造化されたショルダーライン、高いアームホール、長めにカットされた着丈ハンツマンの証である「1ボタン留め」によって特徴付けらる。

シングルボタンのジャケットはとにかく、通常の2ボタンや3ボタンのジャケットと比較し、ラペルが長くなってしまうのでバランスをとるのが非常に難しいとされているが、「それゆえにハンツマンの誇り」だそうだ。

 

日本での取り扱いは、ないどころかハンツマンと検索しようものなら違う会社がヒットしてしまう程の知名度の低さ。購入の際は公式サイト(英語版)しかないだろう。

価格はジャケットやスーツで20~30万程度だが、「なるほど。シングルボタンのジャケットとは、こういう事か」と思わせる素晴らしいジャケットだったので予算がある方は是非。

 

HUNTSMAN 公式サイト(英語版)

https://www.huntsmansavilerow.com/

 

HUNTSMAN コレクション

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最後に

今回主にイギリス(サヴィルロウ)のテーラーを色々と検索してみたが、一番の感想はとにかく情報が少ない。老舗テーラーでも薄っぺらい情報や軽い歴史くらいしかのっていない事が多かった。

例えば、

  • 「ロイヤルワラント」現在でも残っているのか?
  • ハウススタイルはどのようなものなのか?
  • 現在のヘッドカッターは誰が務めているのか?
  • 現オーナーやクリエイティブディレクターは誰なのか?
  • ビスポークならいくらくらいからなのか?
  • ファブリックは生地はどの様なものをしようしているのか?
  • 日本での展開はどうなっているのか?
  • トルソーに着せたものではなくモデルが着用したコレクション写真は?

など、とにかく情報が集めづらく、ブリティッシュスタイルが日本で流行らない理由がよく分かった。

100万をポンと出せるようなミリオネア―やビリオネア―ならいざ知れず、庶民の感覚としては、10万でも充分ぜいたく品なので購入するともなれば、もっと前情報が欲しいものなのに、一時的に取り扱うこれらのテーラーの商品を扱う百貨店でさえペラペラの情報。

そんなペラペラの情報を見ても「欲しい!東京・大阪まで足を運んで買いに行こう!」とは夢にも思わない。

これでは本格ブリティッシュスタイルが流行るわけもなく、ヘンリープールやギーブス&ホークスが撤退に追い込まれるのも無理はない!

 

他にも、恐らくブリティッシュスタイルを目指す日本のジェントルマンたちは、こういう記事を書く人もいないだろうし、自分の姿をSNSでアップしようと思う人も少なければ、本格派のブリティッシュスタイルを貫く有名芸能人もいないわけで、生の情報がとにかく集まらない。

本格的なブリティッシュスタイルが既製品で買えるともなれば、確実に1ジャンルを気づくものになるであろうに、やはり今や楽にさばける「イタリアもの」が鉄板なのか、本気で取り扱おうと模索しているセレクトショップや雑誌、有名人などが少ないのが残念でならない。

唯一生のイギリスのサヴィルロウ事情の情報が見れるのは、ライター長谷川喜美氏の記事だけだった。

 

 

ではこの辺で

 

 

*1:イギリススーツの仕立て屋通りの事でイギリス中の仕立て屋がここにある。場所はロンドンにあり、日本の「背広」の語源ともなったメンズスーツの原点ともいえる場所。

*2:いわゆるオーダーメイドのスーツ

*3:仕立て屋

*4:「白洲300人力」とも「モテすぎたのが難点」とも言われる敏腕政治家で、留学の際にイギリスを訪れてれて以来イギリススーツとも馴染み深かった。ファッションに対する造詣が深く、初めてジーンズをはいた日本人とも言われている

*5:サヴィルロウ最古の仕立て屋で、最も由緒ある仕立て屋。

*6:イタリアのフィレツェで開かれるメンズファッションの祭典。現在では世界各国のブランドが集い、1年に春夏に1回と秋冬に1回の計2回行われ、メンズファッションのトレンドはココで作られるとも言われている。しかしピッティウォモの規模が大きくなり有名になるにつれ、カラフルなスーツを身に包んだ目立ちたがり屋が増えコスプレパーティーのようになってしまったと嘆く人たちも中には存在する。

*7:裁断責任者の事で、職人が何人もいる場合、大事な部分や総合的な判断は全てヘッドカッターに一任される

*8:英国王室御用達の認証の事で、現在ではエリザベス女王エジンバラ公チャールズ皇太子が任命することができ、認定されると称号がもらえる。5年毎に更新されるので品質が落ちると剥奪される厳しい世界。なので日本の皇室御用達とは違い勝手に名乗ることはできない。

*9:イギリスでのズボンの呼称。イタリアならパンタロー二、フランスならパンタロン